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2021.07.06

DXが広げる未来の可能性【DXは、神様である?最終回】

早いもので、本連載「DXは、神様である?」も最終回を迎えました。今やDXは企業が取り組む必然の課題となり、国内でも導入に動く企業は増えています。しかし、歴史があり、これまでのやり方で成功してきた企業ほど、取り入れるのが難しいのではないでしょうか。そこで今回は、「DXが広げる未来の可能性」として、DX化を成功させた老舗企業とともに、その可能性を考えていきたいと思います。

DXが広げる未来の可能性【DXは、神様である?最終回】
目次

    デジタル庁が発足! DXを推進しなければ、日本に未来はない?

    今年9月、ついにデジタル庁が発足します。デジタル庁は「国・地方行政のIT化やDXの推進を目的とした、IT分野を担当する省庁」とされており、菅総理大臣も「あらゆる分野のデジタル化を進めることで、国民が当たり前に望んでいるサービスを実現し、デジタル化の利便性を実感できる社会をつくっていきたい」と、設立に向けて述べました。
     デジタル庁の採用もスタートし、第1次募集では1432人の応募が。倍率は約43倍に上ったとのことで、その注目度の高さがわかるでしょう。
     経産省は、今のままでは「IT人材の不足」と「古い基幹システム」の2つが障害となり、2025年から2030年までの間に年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると話しています。しかし、これらを克服しDX化を推進できれば、2030年の実質GDPにおいて130兆円の押上げを期待できるとのこと。だから国も本腰を入れて取り組んでいるのです。
     少子化が進む日本では、DX化を推進しビジネスモデルを変革しなければ、競争力がどんどん弱まっていってしまいます。DXは、一組織のビジネスを変えるのみならず、日本全体の競争力強化にもつながる大変重要な取り組みなのです。

    レガシー企業こそ、DXを率先して進めるべき!

    DXの起源は、2004年にスウェーデンのウメオ大学に在籍していたエリック・ストルターマン教授が述べた「デジタル技術が全ての人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」であると言われています。その後2010年代に入り、コンサルティング会社のガートナーやIMDというビジネススクールのマイケル・ウェイド教授らが、対内的・対外的な変化を促すためには、レガシー産業こそDXが必要だと述べました。
     重要なのは「レガシー産業」という部分。すなわち、「古くからあり、テクノロジー系のスタートアップやベンチャー企業によるディスラプション(創造的破壊)が予見される産業こそ、DXを進めなければならない」という、警鐘に近いメッセージが発せられているのです。
     これは正しいと言えます。古くからあり、現在も続いているビジネスモデルの中には、良くも悪くも人に依存しており、アナログなやりとりを介しているケースが多く見受けられます。しかしそれでは、スピードや効率性で新規参入企業に負けてしまう。だからこそ、積極的にDXを行い、組織変革を実現していくことが重要なのです。

    DXの成功企業に見られる5つの共通点

    実際に、DXを成功に導いている企業の特徴として、マッキンゼー・アンド・カンパニーは5つの共通点を挙げています。

    ・デジタルに精通している適任のリーダーを、各部署に配置している
    ・将来の労働力の変化を見据えて、全体的な組織能力を向上させている
    ・新しい働き方を導入し、従業員の生産性を向上させている
    ・日々デジタルツールを導入するなどして、社内をアップグレードし続けている
    ・新しいデジタルシステムをむやみに導入せず、旧システムも見直しながら、徐々に新体制へと移行させている

     これらの項目から、経営陣をはじめとした決裁者が柔軟な思考で、全体を見つつ、柔軟にシステムを変えていくことの重要性がわかると思います。事業全体を捉え、いかにうまく現場と適合していくかが成否をわけると言えそうです。

    絶体絶命の危機からDXで急回復した老舗旅館「元湯 陣屋」

    実際にDXを成功させた企業は、いかに現場に取り入れていったのでしょうか。神奈川県鶴巻温泉の老舗旅館のひとつ「元湯 陣屋」は、従来の人の手による業務を抜本的に変え、大変革とも言えるチャレンジを成功させました。
     陣屋の創業は大正7年。100年以上の歴史のある旅館として、昔ながらの分業体制で、勘と経験を大切にした経営を行っていました。しかし、2008年にはリーマンショックの影響で廃業寸前に。なんとこの時点では売上2億9千万円に対し、借入金が10億円以上あったということです。
     まさに絶体絶命と言える状況ですが、経営陣は諦めず、業務の抜本的な変革を決意。ITツールを積極導入しながら、不慣れな自分たちでも運用できるような体制に整えていくことでDXを進めていきました。
    通常、旅館のITツール導入というと、ホームページのリニューアルや予約システムの導入が思い浮かびますが、陣屋がこだわったのは各業務の連携。予約システムはもちろんのこと、予約から接客、また清掃や調理場といった各業務をシステム上で連携することにより、すべてのワークフローを効率化していきました。朝礼や夕礼、清掃の指示、引き継ぎといったコミュニケーションも、チャットに置き換えたということから、いかに徹底して実施したかがわかると思います。さらに顧客や集客情報のデータ化を進めることで、利益率の見通しを立てられるようにしました。
    これらの取り組みを徹底して行った結果、売上はV字回復。なんと従来から2倍の売上を実現させました。また業務効率化も実現できたため、それまでなかった定休日も設けることができ、結果として離職率が30%から4%まで減らすことができたということです。

    おわりに:DXは、産業と企業の未来を広げていく

    陣屋の取り組みを見ると、まさに前述の「成功企業の5つの共通点」に当てはまっていることがわかります。
     代表である宮崎氏は、「旅館が憧れの職業になるように、これからも尽力していきたい」とメディアで述べています。旅館といえばレガシー産業の代表例ですが、陣屋のように業界全体がDX化を進めていくことで、若者が憧れる産業になる日がくるのかもしれません。

     DXは、あくまで「ITへの投資」ではなく、「未来を切り開くための投資」。現在は新型コロナウイルスの影響もあり、先行きが不透明な部分もありますが、このような時代にこそ、率先して取り組むべき事柄だと言えるでしょう。
     DXは、未来の可能性を広げる取り組みです。今こそ、事業の変革を始めましょう!

    最後までお読みいただきありがとうございます。<DXは神様である?>シリーズ、過過去記事の振り返りと併せて、ぜひご覧ください!

    <過去の記事はこちらから>
    【DXは神様である?】なぜ今、DXなのか、 そしてブランディングからDXをどう捉えるの?
    【DXは、神様である?Vol.2】働き方だけじゃない。変わる企業と顧客の関係性
    【DXは、神様である?Vol.3】DXを始めるときに、推進部門が考えるべきこと
    【DXは、神様である?Vol.4】自社にしかできないDXを実現するために
    【DXは、神様である?Vol.5】DXも、大切なのは「人の想い」

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