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2021.03.30
【DXは、神様である?Vol.4】自社にしかできないDXを実現するために
DXという言葉がだいぶ浸透してきました。しかし実際の取り組みを見ると、業務効率化の次元にとどまるような目の前の課題を解決する取り組みが多くあります。テクノロジーを有効活用し、自社独自のDXを実現するためには、一体何が大切なのでしょうか。今回は、『北欧、暮らしの道具店』のアプリ開発のエピソードとともに、その可能性を探っていきます。
目の前のニーズを満たすのが、DX?
先日、インターネットメディア『ITmedia』が、『明確なDX戦略がない企業にガートナーが警鐘 「80%以上がシェアを奪われる」(https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2103/11/news065.html)』という記事を公開しました。
現在、DXは日本でも非常に注目されています。その機運は刻々と高まっているものの、現時点での取り組みは、ペーパーレスや脱ハンコといった目の前のニーズを満たすものが多いのが実情です。
記事に登場するガートナージャパンはこの状況に警鐘を鳴らします。DXは本来、事業の在り方そのものを変える取り組みですが、目の前のニーズを満たしているばかりではITを活用した業務最適化に過ぎません。このようなことばかりを「DXだ」と言って取り組んでいると、多くの企業が数年以内に時代遅れの企業になってしまうと、ガートナージャパンは警告しました。
現在はグローバル化が進み、国境がなくなっている時代。これまでは外資の参入においては日本語の壁がありましたが、デジタル時代になり、それもなくなってしまいました。時代遅れの企業は、あっという間に海外のスタートアップや競合に追い抜かれてしまうかもしれません。
UI/UXの質が、商品・サービスづくりにおいて何よりも重要になる
「いやー、さすがにそれは言い過ぎなんじゃない? 日本語で書かれていないと海外のサービスは使いにくいし……」と、おっしゃる方もいるかもしれません。
ですが、海外のサービスが市場を席巻した例はたくさんあります。現に、コロナ禍になり多くの企業が使い始めたZoomはそうでした。
実はZoom自体は、数年前から多くの企業や投資家に注目されており、日本ではNECネッツエスアイが2017年の夏頃から販売代理店を担っていました。しかし現在のZoomユーザーにおいて、NECネッツアイに問い合わせて利用を始めた方はどれだけいらっしゃるでしょうか。知り合いに紹介してもらったり、自分で検索したりしながら、活用にこぎつけた方がほとんどだと思います。
DXの代表格とされるZoomは瞬く間に広がりましたが、その背景には優れたUI/UX、ユーザービリティがありました。実際、オンラインMTGはSkypeでもLINEでFacebookでも行えます。しかし説明入らずで、一目で「とりあえず使える」状態になる画面のつくりや、ストレスなく相手とコミュニケーションが取れるユーザー体験といった、細かな部分が使い勝手の良さがZoomの価値につながっています。
これは誤解を恐れず言えば、機能自体はありふれたものでも、UI/UXが優れていれば、より多くの人に使われる可能性があるということ。このような視点はZoomのようなツールに限らず、ECサイトやメディアといったサービスにおいても応用することができます。
根強いファンが存在する『北欧、暮らしの道具店』
みなさんは『北欧、暮らしの道具店』というECサイトをご存知でしょうか。こちらは株式会社クラシコムが運営するサービス。UI/UX、そしてブランディングが優れており、「北欧雑貨」というライバルの多い市場において、群を抜いて支持されています。
『北欧、暮らしの道具店』では様々なインテリア雑貨、またオリジナル商品ブランドのアイテムを販売していますが、それだけを切り取ると普通のECサイトです。特徴的なのはコンテンツを通して、その商品が生まれた背景や、どのような想いを持って作られたかなどを併せて語ることにより、商品にまつわるストーリーも同時に訴求しているところです。
例えば、『【シャンプー迷子、卒業しました】愛用歴1年。スタッフ2人がこのシャンプーを選んだ理由(https://hokuohkurashi.com/note/226933)』という記事。こちらでは、スタッフが実際に使っている商品をレビューしています。商品詳細を見ると、このシャンプーは決して安くはありません。しかし等身大かつユーザーの目線で商品を紹介することで商品を身近に感じることができ、それがブランド価値を高めていると言えるでしょう。
最高のUXを目指したアプリケーション開発
2019年、『北欧、暮らしの道具店』は、ECサイトに加え、アプリ開発を行いました。しかしこれは、単なるアプリケーションに販売を置き換えたのではありません。
アプリにおけるキーワードは、「ワクワク感を届ける」。
『北欧、暮らしの道具店』には、記事・動画・ラジオなど豊富なコンテンツが蓄積されています。そのため、それらをアプリにおいても、いかに魅力的に届けるかがテーマとなっていました。
そこで開発チームが心がけたのは、「最高のUXを実現すること」。背景・想い・目的を踏まえるのは当然のこと。それに加えて満足度の高いUXを実現するために、いくつもの技術的工夫を行いました。たとえば、Firebaseのクラッシュを定期的にチェックして迅速に修正する。アクセスログを解析してリクエストAPIの数を調整しサーバー負荷を軽減、徹底的に快適な閲覧環境を提供するなどです。
さらには魅力的なコンテンツをユーザーが楽しみやすいように、ビデオミニYoutubeプレイヤーとラジオミニRadioプレイヤーを実装。これにより、文字だけでなく、音でも、動画でもコンテンツを楽しむことができるようになりました。
自社の資産×テクノロジー=独自のDX
『北欧、暮らしの道具店』の場合、ECサイトの良さを活かし、さらにその良さを拡張するようなテクノロジーを採用していることにアプリ化の価値があります。売上は、あくまで商品の販売によって成り立っていますが、自社のブランドをきちんと理解しながら、UI/UX、そしてテクノロジーを高い次元で融合し、ひとつのエンタメコンテンツとしてユーザーにサービスを提供している点が、他にはない強みだと言えるでしょう。
最近では台湾や韓国など海外からのサイト訪問も多く、海外に向けた販売もスタートしているとのこと。これまでに培ってきたコンテンツをはじめとした資産を活用しながらアプリ化を実現し、世界に発信していく姿勢は、日本企業のDX化の一つのロールモデルとなるのではないでしょうか。
単なる業務最適化ではなく、事業のあり方やブランドにまで影響が波及するような取り組みが、本質的なDX。そこに自社の資産を掛け合わせることで、他企業にはできないような独創的なDXが実現できるのです!
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最後までお読みいただきありがとうございます。<DXは神様である?>シリーズ、第4回でした。今後もDXにまつわる記事を定期的に更新いたしますので、ぜひご覧ください!
<過去の記事はこちらから>
【DXは神様である?】なぜ今、DXなのか、 そしてブランディングからDXをどう捉えるの?
【DXは、神様である?Vol.2】働き方だけじゃない。変わる企業と顧客の関係性
【DXは、神様である?Vol.3】DXを始めるときに、推進部門が考えるべきこと