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「RJP(リアルな情報開示)」でミスマッチ・早期退職を防ぐ、採用サイト改善のポイント

採用コストをかけて獲得した人材が、入社後すぐに「思っていた仕事と違った」という理由で辞めてしまう…。こうした「採用ミスマッチ」は、特にリソースが限られる中小企業にとって深刻な問題です。

このミスマッチを防ぐ鍵として注目されているのが、RJP (Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示) です。この記事では、採用サイトでRJPを実践し、入社後のギャップを減らすための具体的なコンテンツ制作のヒントを、中小企業の採用担当者様向けに分かりやすく解説します。

RJP(リアルな情報開示)とは?

RJPとは、採用活動において、企業のポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も含めて、ありのままの姿を候補者に伝える採用手法です。

従来の採用手法では、企業の魅力や待遇の良い面をアピールし、課題や仕事の困難な部分には極力触れないことが一般的でした。一方、RJPを活用した採用では、仕事のやりがいと同時に大変さも伝え、組織の強みと課題の両方を開示します。候補者を「共に働くパートナー」として尊重し、互いによい関係を築くことを目指します。

RJPが注目されている理由

RJP手法が注目されているもっとも大きな理由として、「転職後の早期退職の増加」が多くの企業で課題になっていることが挙げられます。売り手市場が続く中で、企業側にはハードルを下げてでも人材を確保したいという気持ちが働いています。業務適性が低かったり、社風と合わないような人が入社する頻度が増え、結果として早期退職につながってしまう。双方にとって不幸なミスマッチを防ぐために、リアルな情報を開示することの必要性が高まっています。

もう一つの理由として、候補者の視点で企業を見る目が変わってきているというのも見逃せない理由です。候補者の立場が「選ばれる側」から「選ぶ側」にシフトしたことで、企業をより主体的に評価するようになっています。もともと、企業側の発信する情報だけで完結させず、口コミサイトやSNSで多角的に情報を収集して企業のリアルな姿を捉えようとするのは候補者にとって一般的な行動でしたが、そこで情報にズレがあった際に生じるマイナスの印象は以前よりも大きくなっています。不都合な情報を隠さずに伝えることは、単にミスマッチを防ぐだけでなく、誠実な印象を与え信頼獲得につながる加点要素にもなっているのです。

RJPを導入するメリット

1. 早期離職率の改善

RJPの導入は、入社後の「こんなはずじゃなかった」という期待値のギャップを大幅に減少させます。仕事の厳しい側面も事前に理解した上で入社を決意するため、困難な状況に直面しても「聞いていた通りだ」と受け入れやすくなります(ワクチン効果)。これにより、特に問題となりがちな入社後数ヶ月の早期離職率の改善が期待できます。離職が減ることは、採用コストや再教育コストの削減だけでなく、既存社員の士気低下を防ぐことにも直結します。

2. 採用効率の向上

RJPによってリアルな情報が開示されると、候補者は応募段階で「自分には合わないかもしれない」と判断し、自ら選考を辞退するケースが増えます(セルフスクリーニング)。一見、応募数が減るように思えますが、結果として自社とのマッチ度が高い「質の高い」候補者が選考に残るため、面接や選考プロセスの効率が向上します。採用担当者や現場の社員が、ミスマッチな候補者の対応に費やす時間を削減でき、本当に会うべき人材とのコミュニケーションに集中できるようになります。

3. 企業ブランドの向上(大手との差別化)

中小企業が給与や福利厚生で大手企業に対抗するのは容易ではありません。しかし、「誠実な情報開示」という姿勢は、企業規模に関係なく実践できる強力な差別化要因となります。 組織規模が小さいからこそ、現場の実情をダイレクトに伝えやすいという強みを活かせば、誠実な採用姿勢が評価され、長期的な採用力強化につながります。

RJPが採用ミスマッチを防ぐ理由

RJPを導入することで、企業と候補者の間に生じる「期待値のズレ」を最小限に抑えることができます。これには、主に次のような効果があるためです。

①候補者自身による見極めが進む

ありのままの情報を得ることで、候補者自身が「自分にこの会社は合っているか」を判断しやすくなります。結果として、自社にマッチしない可能性の高い候補者の応募が減り、選考の効率が上がることも期待できます。

②入社後のギャップ耐性が高まる

入社前に「仕事の大変な面」を知っておくことで、実際に困難に直面した際のショックが和らぎます。これが「ワクチン効果」と呼ばれ、「聞いていない」という不満による離職意向を抑える働きがあります。

③企業への信頼感が高まる

ネガティブな情報も含めて正直に開示する姿勢は、候補者からの信頼を獲得します。「この会社は誠実だ」という印象は、入社後の組織への愛着や貢献意欲(コミットメント)にもつながります。

④期待される役割が明確になる

入社前に期待される役割や責任範囲が明確になるため、候補者は入社後の行動指針を具体的にイメージできます。これにより、入社後スムーズに業務に適応し、早期の戦力化にも貢献します。

採用サイトで実践するRJPコンテンツ

RJPを実践する上で、まずは社内で「開示する情報」を整理することから始めましょう。

まずは開示する情報を整理する

現場の社員を集めてワークショップを開き、「仕事のやりがい(ポジティブ情報)」と「仕事の大変な点(ネガティブ情報)」を両方出し合うことが有効です。

このとき、「ネガティブな情報を出すことへの抵抗感」が課題になることがよくあります。大切なのは、視点を変える「リフレーミング」です。例えば、「弱み」を「成長の余地」として捉え直し、「問題」を「チャレンジ」として表現します。あるいは「欠点」も「改善に取り組んでいる点」として伝えることで、ネガティブな情報も前向きな文脈で伝えられるようになります。

採用サイトで開示すべき5つの情報

採用サイトで特に開示が推奨されるのは、入社後のギャップにつながりやすい情報です。

伝えるべき情報開示内容のポイントと伝え方の例
「残業時間・休日出勤の実態」月平均の残業時間や繁忙期との違いを具体的に示します。

例: 「平均残業は月30時間程ですが、月末の繁忙期は40時間を超えることもあります。その分、閑散期は定時退社を推奨しています」
「キャリアパスの現実的な展開」昇進の平均年数やスキル習得に必要な努力について触れます。

例: 「主任への昇格は平均3〜5年が目安です。ただし実力次第で早期昇格も可能ですし、一方で専門スキルの習得には地道な学習が求められます」
「組織の課題と改善への取り組み」現在直面している課題と、それに対する取り組みをセットで伝えます。

例: 「正直、業務のデジタル化が遅れている面があります。しかし現在DXプロジェクトを立ち上げ、一緒に会社を変えていってくれる方を求めています」
「仕事の難易度と必要なストレス耐性」クレーム対応など困難な場面やサポート体制を説明します。

例: 「お客様からのクレーム対応は精神的にタフな仕事です。ですが、上司や先輩が必ずフォローし、一人で抱え込まない体制を作っています」
「社内の人間関係・カルチャーの実情」チームワークの実態やコミュニケーションの特徴を具体的に伝えます。

例: 「当社は家族的な雰囲気で、月1回の懇親会も(任意参加ですが)7割程が参加します。密接な関係が特徴ですが、困った時に助け合える環境です」

採用サイトでの具体的なコンテンツ例

RJPを実践するための具体的なコンテンツ例を紹介します。

社員インタビュー

社員インタビューは、RJPの「要」となるコンテンツです。入社後のギャップを減らすため、必ず以下の質問を含めるように設計しましょう。

  • 「入社前のイメージと違った点(ギャップ)は?」
  • 「これまでで一番大変だった経験は?」
  • 「それをどう乗り越えましたか?」
  • 「大変さの中で得られた成長は?」

良い面だけでなく、苦労した経験とそれを乗り越えたリアルなストーリーを語ってもらうことで、候補者は入社後の働き方を具体的にイメージでき、信頼醸成にもつながります。

1日の仕事の流れ

「1日の仕事の流れ」を紹介するコンテンツも有効です。ポイントは、理想的な1日だけを紹介するのではなく、「通常時」と「月末の繁忙期」のように、複数のパターンを見せることです。

例えば、通常時は「18:00 退社」、繁忙期は「20:00 退社 ※月末は3〜5日続く」といった具合に併記することで、業務の繁閑の実態がより正確に伝わります。

数値データの開示

具体的な数値を積極的に開示することも、誠実さを示す上で効果的です。例えば、以下のような項目が考えられます。

  • 平均残業時間(全社平均だけでなく、部署別もあると尚良い)
  • 有給取得率
  • 離職率(特に新卒3年以内など)

もし有給取得率や離職率の数値が芳しくない場合でも、「昨年比+10%(改善中)」や「新卒3年以内: 20%(改善取り組み中)」のように、課題として認識し改善努力を行っていることを併記することで、ポジティブな印象につなげられます。

RJPで伝え方を考えるべき情報

開示してはいけない情報

よくある誤解の項目で触れた通り、RJPは「何でも開示する」ことではありません。法令違反やトラブルの原因となるため、開示を控えるべき情報もあります。

例えば、特定社員の評価や給与、病歴といった「個人情報に関わる内容」は開示してはいけません。また、具体的な売上数値や取引先との契約内容などの「機密情報」も守る必要があります。

「確定していない将来の計画」、例えば検討段階の新規事業や未決定の組織変更なども、混乱を招くため開示は不適切です。

最も注意すべきは「法的リスクのある情報」です。サービス残業の実態や未解決のハラスメント問題など、労働基準法などに抵触する可能性のある内容を開示することはできません。

ネガティブ情報を成長機会に変換する伝え方

ネガティブな情報を伝える際は、それを「成長機会」としてポジティブに変換する工夫が重要です。

例えば、「教育体制が不十分」という事実は、「教育制度が整っていません」と伝えるのではなく、「体系的な研修はまだ構築中ですが、その分、実践を通じて学ぶ機会が多く、自ら考えて行動する力が身につきます」と言い換えることができます。

同様に、「残業が多い」という場合も、「うちは残業が多くて大変です」と伝える代わりに、「繁忙期は残業が増えますが、その分、短期間で濃密な経験が積め、通常3年かかる成長を1年で実現できる環境です」と表現することで、成長意欲の高い候補者に響く可能性があります。

まとめ

RJP(リアルな情報開示)は、単なる採用手法ではなく、企業と求職者が誠実に向き合い、真の マッチングを実現するための「考え方」です。ネガティブな情報を開示することには勇気がいるかもしれません。しかし、その誠実な姿勢こそが候補者からの信頼を獲得し、入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぎます。

「RJPは応募者を減らすだけ」と心配されることもあります。実際、短期的には応募数が減少する可能性はあります。しかし、その分、結果して自社とのマッチ度が高い候補者の割合は向上する傾向にあります。最終的に採用しない/定着しない人材からの応募を減らすことは採用コストを抑える上で有効に働きます。

中小企業だからこそ実現できる「顔の見える誠実な採用」 として、まずは自社の採用サイトや求人広告で「仕事の大変な点」と「それを乗り越えるサポート体制」を併記することから始めてみてはいかがでしょうか。

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