クリニック開業の宣伝はいつから?何から? 良いスタートを切るためのWeb・オフライン宣伝ロードマップ
はじめに
開業準備に取り組む先生方へ
クリニック開業にあたり、物件の選定、医療機器の導入、スタッフの採用、各種許認可の申請など、先生方は日々膨大なタスクに取り組まれていることと存じます。理想の医療を実現するための準備と並行して考えなければならないのが、「集患(しゅうかん)」、すなわち患者様にクリニックの存在を知っていただき、選んでいただくための活動です。
どれほど素晴らしいスタッフや最新の設備を整えても、その存在が地域の方々に伝わらなければ、クリニックの経営は軌道に乗りません。しかし、「宣伝と言っても、何から手をつければいいのか?」「Webサイトはいつまでに作るべき?」「医療広告ガイドラインもあって難しそう…」と、宣伝・広報活動に悩まれる先生方が非常に多いのも事実です。
この記事は、そのようなお悩みを抱える先生方のために、クリニック開業の宣伝活動を「いつから」「何をすべきか」という観点で時系列にまとめたロードマップです。
この記事でわかること
具体的には、以下の点について解説します。
- 現代の患者様がどのようにクリニックを探しているか
- 核となるホームページ(Webサイト)制作の最適なタイミング
- Webサイトと連携すべき必須ツール(Googleビジネスプロフィールなど)
- Web・オフラインそれぞれの宣伝手法と特徴
- 開業6ヶ月前から開業後までの具体的な行動ロードマップ
- 必ず守るべき「医療広告ガイドライン」の注意点
この記事を読み終える頃には、開業に向けた宣伝活動の全体像が明確になり、自信を持ってスタートを切るための準備が整うはずです。
クリニック宣伝準備の要点
詳しい説明に入る前に、クリニック開業の宣伝を考えるうえでこれだけは外してはならないというポイントを2つ、お伝えしておきます。
①ホームページを用意し「Google ビジネス プロフィール」と連携する
現代において、体調不良を感じたり、かかりつけ医を探したりする際、多くの人がまずスマートフォンやPCで検索します。
(例)「渋谷 内科」「〇〇(地名) 皮膚科 口コミ」
検索結果やGoogle マップを見て、表示されたクリニックの公式サイトで情報を確認し、Google マップをはじめとした外部の口コミをチェックし、来院するかどうかを判断する。これが一般的な患者様の行動パターンです。
したがって、信頼できる情報が網羅された「ホームページ(Webサイト)」と、検索・マップで発見してもらうための「Google ビジネス プロフィール(GBP)」の用意は、現代のクリニック開業において必須といってもいいほど優先すべき対応です。
②医療広告ガイドラインの存在を知っておく
医療関連の広告には「医療広告ガイドライン」と呼ばれる決まりがあります。違反したものは是正するように警告を受け、悪質と判断されたケースでは違反事例として公表されたり刑事罰を受ける場合もあります。
クリニック側がこのガイドラインを意識していない状態で、医療関係の経験がない制作会社やフリーランスに依頼すると、かなりの確率で不適切な表現を含んだクリエイティブに仕上がります。一般的な宣伝・集客では問題なく、効果的な表現手法ほど規制対象になっていることが多いからです。
医療系に詳しいパートナーに制作を依頼する、詳しく調べてクリニック主導でコンテンツを作成する…など、対応の仕方は様々です。いずれにせよ、その存在を知ってさえいれば、気付かないうちにルールを破ってしまうという事故を防ぐことができます。
ユーザーのクリニックの探し方
それでは改めて、順を追って説明していきます。宣伝戦略を立てる上で最も重要なのは、「患者様がどのように情報を集め、クリニックを選んでいるか」を知ることです。
クリニック選びの情報源
患者様は具体的にどのような情報源を使ってクリニックを探しているのでしょうか。参考として、株式会社メディカルドックが実施した調査(※)による「医療機関を選ぶ際に情報源として活用したもの」のランキングをご紹介します。
【医療機関を選ぶ際に活用した情報源ランキング】
- 病院・クリニックのホームページ:77.6%
- 病院・クリニックのポータルサイト:63.4%
- 友人・知人からのクチコミ:23.7%
- SNS:6.8%
- 路上・電柱の看板広告:5.7%
- 情報誌・フリーペーパー:5.0%
- 駅・バスなどの交通広告:3.7%
- 新聞広告・折込チラシ:3.6%
※出典:株式会社メディカルドック「(2)患者は何を情報源として医療機関を選んでいるのか?」(2022年4月)
この結果からも、「ホームページ(Webサイト)」が圧倒的に重視されており、次いで「ポータルサイト」(Googleマップや専門サイトを含む広義の口コミサイト)が見られていることが明確です。
Webサイトという信頼の「受け皿」をしっかりと構築し、それ以外のツール(オンライン・オフライン両方)で存在を認知してもらう、という戦略の重要性がわかります。
ユーザーがクリニックを探す際に重視するポイント
では、患者様がWebサイトや口コミでチェックしているのは、どのようなポイントでしょうか。複数の調査で共通して上位に挙げられるのは、以下のような項目です。
1. アクセスの良さ(通いやすさ)
最寄り駅からの距離、駐車場の有無、通院のしやすさは非常に重要です。
2. 診療時間(通いやすさ)
「土日祝も診療しているか」「平日の夜は何時までか」など、自身のライフスタイルに合うかが重視されます。
3. 医師の専門性・経歴
院長先生の専門分野、資格、これまでの経歴は、信頼の証となります。
4. 口コミ・評判
Google マップや各種ポータルサイトでの第三者の評価は、来院を決定づける大きな要因です。
5. 院内の雰囲気・清潔感
Webサイトの写真などで伝わる院内の様子も、安心感につながります。
これらの「患者様が知りたい情報」を、WebサイトやGBPで過不足なく、かつ分かりやすく提供することが集患の第一歩です。
クリニック探しに使われているツール
患者様がクリニックを見つける(=クリニック側が宣伝する)ためのツールは、オンラインとオフラインに大別されます。
ツール解説
▼ オンラインツール
スマートフォンの普及により、その重要性は年々高まっています。特にWebサイトとGBPは、他のあらゆる施策の「受け皿」となるため、最優先で整備する必要があります。
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| 公式Webサイト | 信頼性の担保、診療内容、医師紹介、アクセスなど、全ての公式情報の基盤。デザインや情報量がクリニックの「顔」となる。 |
| Google ビジネス プロフィール (GBP) | Google検索やGoogle マップ上にクリニック情報を表示する無料ツール。口コミ機能があり、患者様の評価が可視化される。 |
| Web広告 (リスティング広告) | 「地域名+診療科」などで検索した際に、検索結果の上位に広告を表示する手法。開業初期の認知度を急速に高めるのに有効。 |
| SNS (LINE, X, Instagram) | LINEは予約システム連携や再診促進に、XやInstagramはクリニックの雰囲気や人柄を伝え、ファン作りに向いている。 |
| 医療ポータルサイト | 地域のクリニック情報がまとまったサイト。掲載には費用がかかる場合が多いが、一定のアクセスが見込める。 |
▼ オフラインツール
Webが主流とはいえ、地域密着型のクリニックにとって、昔ながらのオフライン施策も依然として有効です。特に高齢者層へのアプローチや、近隣住民への「開業しました」という挨拶代わりの告知に役立ちます。
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| 看板 (野立て・壁面) | クリニックの「場所」を物理的に示す最も重要なツール。視認性とデザインが鍵。 |
| チラシ (ポスティング・新聞折込) | 開業告知や内覧会の案内に最適。商圏内のターゲットに直接情報を届けられる。 |
| 内覧会 | 開業前に院内を公開し、地域の皆様に雰囲気や設備、医師の人柄を知ってもらうイベント。信頼構築に非常に効果的。 |
| リーフレット・診察券・名刺 | 挨拶回りや院内配布用。クリニックの基本情報やコンセプトをコンパクトに伝える。デザインの統一感が重要。 |
ロードマップの説明
宣伝・広報活動は、場当たり的に行うのではなく、計画的に進める必要があります。特にWebサイトの制作や看板の発注には時間がかかるため、最低でも開業の半年前から動き出すことを強く推奨します。
なぜ半年前か?
- Webサイトは、企画、デザイン、原稿作成、構築、修正を経て公開するまでに、平均3〜4ヶ月かかります。
- ロゴマークやリーフレットなどのデザインも、Webサイトと並行して進める必要があります。
- 開業直前は他の準備で多忙を極めるため、前倒しで進めることが成功の鍵です。
ロードマップは、大きく以下の4つのフェーズに分かれます。
- 【6〜4ヶ月前】計画・準備フェーズ
- 【3〜2ヶ月前】制作・発信開始フェーズ
- 【1ヶ月前〜直前】認知拡大フェーズ
- 【開業後】関係構築フェーズ

【開業6ヶ月〜4ヶ月前】計画・準備フェーズ
目的:宣伝の「土台」と「軸」を固める。
この時期は、自院の「強み」を明確にし、それを伝えるためのツール制作のパートナーを選定する重要な時期です。
クリニックのコンセプト、ターゲット患者層の明確化
「誰に」「どのような医療を」提供するのか?(例:働く世代向けの夜間診療、小児に特化した優しい雰囲気、専門性の高い疾患治療など)このコンセプトが、後のデザインや発信するメッセージの核となります。
宣伝の核となるWebサイトの企画・制作会社選定を開始
実績(特に医療分野)や費用、担当者との相性を見極め、依頼先を決定します。
ロゴマーク、名刺、診察券などの基本デザインに着手
クリニックの「顔」となるロゴマークを決定します。Webサイトや看板、印刷物など全てのツールで統一して使用するため、早期に確定させましょう。
【開業3ヶ月〜2ヶ月前】制作・発信開始フェーズ
目的:Webの受け皿を構築し、物理的な看板を設置する。
計画フェーズで決めたコンセプトに基づき、各種ツールを具体的に形にしていく時期です。
Webサイト制作の本格スタート(原稿・写真準備)
制作会社と打ち合わせを重ね、デザインを確定させます。院長の挨拶、診療案内、経歴などの「原稿」を準備します。(可能であれば)建設中の院内や、院長・スタッフのプロフィール写真の撮影を行います。
Googleビジネスプロフィールの登録と情報入力
開業予定地で登録を済ませ、診療時間やWebサイトURL(仮でも可)、診療内容などの基本情報を入力しておきます。(開業日までは「開業予定」として表示されます)
(必要であれば)SNSアカウントの開設
ターゲット層に合わせてX(旧Twitter)やInstagramなどのアカウントを開設し、開業準備の様子などを発信し始めます。
建設中のクリニックに設置する「看板」のデザイン・発注
視認性、デザイン、医療広告ガイドラインを遵守しているかを確認し、施工業者に発注します。
【開業1ヶ月前〜直前】認知拡大フェーズ
目的:開業に向け、地域住民への認知を一気に高める。
いよいよ開業が目前に迫るこの時期は、作り上げたツールを使い、積極的に「開業」の事実を告知していきます。
Webサイトの公開
開業の最低でも2〜3週間前には公開し、Web上で情報が閲覧できる状態にします。予約システムを導入する場合は、このタイミングで稼働させます。
Web広告(Google/Yahoo!リスティング広告)の配信開始
「地域名+診療科」で検索する、来院確度の高いユーザーに向けて広告を配信。開業直後のスタートダッシュを支援します。
内覧会の告知(チラシのポスティング、新聞折込など)
内覧会の日程を告知するチラシを作成し、近隣エリアに配布します。
近隣の薬局や連携機関への挨拶回り(リーフレット持参)
クリニックの概要や先生の専門性をまとめたリーフレットを持参し、連携先となる近隣の調剤薬局や病院・クリニックへ挨拶に伺います。
【開業後】関係構築フェーズ
目的:継続的な情報発信により、地域での信頼を確立する。
開業はゴールではなく、スタートです。継続的な情報発信が、患者様との信頼関係を築き、「かかりつけ医」としての地位を確立させます。
Webサイトでのブログ更新(疾患情報、健康コラムなど)
専門家としての信頼性を高めると同時に、Webサイトの検索順位(SEO)にも良い影響を与えます。
Googleビジネスプロフィールでの口コミへの返信
良い口コミには感謝を、ネガティブな口コミには真摯に対応することで、クリニックの誠実な姿勢が伝わります。
SNSでの定期的な情報発信
季節の疾患情報、予防接種のお知らせ、クリニックの日常などを発信し、患者様との接点を持ち続けます。
これだけは知っておきたい「医療広告ガイドライン」の注意点
クリニックの宣伝において、絶対に遵守しなければならないのが「医療広告ガイドライン」です。
医療広告ガイドラインとは?
- 概要: 正式名称を「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」と言い、厚生労働省が定めた医療機関の広告に関するルールです。
- 目的: 不適切な広告によって患者様が不利益を被ることを防ぎ、患者様が適切な医療機関を選択できるようにするため(患者保護)に設定されています。Webサイトも、2018年からこのガイドラインの規制対象となっています。
- 罰則: ガイドラインに違反した場合、行政による報告命令や立入検査、中止・是正命令が出されます。これに従わない場合、懲役または罰金が科される可能性もあります。
※ガイドラインについて、より正確な情報は厚生労働省のページに掲載されているお知らせや資料ファイルをご確認ください。
具体的なNG例
意図せず違反してしまうケースも多いため、特に以下の点に注意してください。
比較優良広告
「日本一」「No.1」「最高」など、客観的な事実に基づかない最上級の表現。(NG例:「地域で一番の〇〇治療」)
誇大広告
「必ず治る」「絶対安全」など、効果を保証するような表現。(NG例:「この治療で100%完治します」)
患者様の体験談
治療の効果や感想に関する、患者個人の体験談の掲載。(NG例:「〇〇先生のおかげですっかり良くなりました」)
ビフォーアフター写真(原則NG)
治療前後の写真を並べて掲載すること。
※ 通常必要な治療内容、費用、主なリスク・副作用などを詳細に併記するなどの厳格な条件を満たせば可能ですが、非常にハードルが高いです。
品位を損ねる表現
「今だけ半額キャンペーン!」など、費用を過度に強調し、医療の品位を損ねる表現。
Webサイトやチラシを作成する際は、必ず制作会社にガイドラインを遵守するよう伝え、先生ご自身でも最終チェックを行うようにしてください。
まとめ
クリニック開業における宣伝・広報活動は、闇雲に手を出すのではなく、「患者様の行動」を理解し、「適切なタイミング」で「適切なツール」を準備・実行することが成功の鍵です。
核となるのは、「公式Webサイト」と「Google ビジネス プロフィール」です。これらを半年前から計画的に準備し、開業直前から開業後にかけて継続的に情報を発信し続けることで、地域に根ざしたクリニックとしての信頼が醸成されていきます。
スタイルメントでは、クリニック開業サイト制作のご相談を随時受け付けています。
私たちは、単にWebサイトを制作するだけではなく、クリニックの「顔」となるロゴマークや印刷物のデザイン、開業後の継続的な情報発信まで、クリニックのブランディング全体を深く理解し、伴走するパートナーです。
集患戦略やWebサイト制作、医療広告ガイドラインの遵守など、何か一つでもご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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