
ある調査では日本企業の99%、ないし95%が中小企業であると言われています。
その中でも経営戦略にデザイン戦略が必要だと考えている企業経営者も少なくは無いはずです。
では何故今、企業経営にデザイン戦略が必要か?を考えてみましょう。
「良いモノが欲しい」時代から「良いモノは当たり前」
「欲しいモノ」の基準が大きく変化してしまっているのです。
企業情報がユーザーの目に触れる時は、必ずといって良いほどデザイナーの手を通して世に出ることになります。

自社の名刺、会社案内、その他広告等を作る際など社会へ自社または自社製品を広めようと考える時にはデザイナーもしくはデザイン会社へ発注した経験があると思います。
実は、このデザイナーに発注するという行為自体に問題が隠されているのです。
例えば、名刺を制作するときに必要な要素はロゴマーク、会社名、住所、電話番号、付加要素として営業品目だったりします。
確かに名刺というモノを考えるとこれだけで十分事足りていると考えるのが普通です。
さて、本当に事は足りているのでしょうか?
本来考える必要があるのは入れる要素ではなく、名刺を制作する「本来の意味」なのです。
渡す側と渡される側の関係がどのように変化する事が望ましいのか?という想いを込めて制作する必要があるのです。
名刺を作る意味は色々とあると思いますが、大切なのは受け取った後、どのようなストーリーが続いていくのかということなのです。
ですから、名刺をデザインする時にその次のコミュニケーションはどのような手段なのか、最終目的はどのような関係が望ましくて、その期間はどのくらい必要なのかということをデザイナーは知る必要があり、その最終目的までの導線を考え、戦略化する必要があるのです。
名刺のデザインでデザイン戦略の多くを語る事はできませんが、末端の制作物にいたるまで、美しいデザインが必要なのではなく、企業のフィロソフィーをユーザーへ到達させる事が重要なのです。

もう一つはクライアントがある一定の期間に目標としている数値に対し、結果を導き出す仮説を作る手段が大切なのです。
ユーザーの価値観や開発技術は日々進化して中、デザインの役割にはどのようなものがあるかを考えていくと、製品のフィロソフィーに近いところの変化、ユーザー動向、社会現象等など、何が変化するかわからない要素を反映させる必要性が出てきます。そこでユーザーと企業の関係性を定期的に確認するデザインの運用というプロセスが必要となってくるのです。
デザイン戦略を立案することが今後の企業にとってもっとも大切な経営戦略の一つだと考えています。
デザイン戦略とは企業とユーザーとのストーリーを創造し、企業の数値目標に対して仮説を作り実践を通して数値目標に対して近づけてゆくことなのです。

今までのデザインはビジネスにおいて一つの道具でしかありませんでしたが、これからはデザイン戦略こそが今後の企業のあり方を問うところまでに進化してきています。
私たちの会社が10年間行ってきたデザイン会社としての総まとめを「経営のためのデザイン戦略7+1」にまとめました。
私たちは「売れるデザインの描き方」という勉強会を開かせて頂いております。是非一度足を運んで頂き、これからの企業のあり方をご一緒に考えてみたいと考えております。

美しいものを作り出す。これは私たちデザイナーの使命であると考えています。誰にも描けなかったような新しいアイディア、美しさの新しい領域を生み出すこと。その為に様々なモノを観て、色々な角度からアイディアを生み、それを形にしてゆきます。例えばロゴマークをデザインする。この作業でデザイナーは何案も何案も作ります。時には1000を超えるアイディアを形にし、一つの答えを導き出してゆきます。複数の多種多様な経験を持ったデザイナーが多彩なアイディアへ変換し、考えに考えを重ねる事で、私たちもクライアントも満足するデザインが生まれるのです。

あるクライアントの広告を作っていた時の話です。そのクライアントは創業間もない会社で、製品も未だ社会には認知されていない製品でしたので、私たちはとても綺麗なデザインの広告でその製品の良さをアピールしました。とても自信のあるデザインでしたので、実際の紙面に載った時はなんとも言えぬ充実感に浸る事が出来ました。しかし、数ヶ月後にわかった結果は、その広告から実売に繋がったのはごく僅かだった。という事実だったのです。

そこで、私たちの新たなる挑戦が開始されました。ユーザーが雑誌を購入し、ある特定の広告を見て頂けるのは平均で約2%と言われています。そこで私たちはとにかく雑誌のめくる手を止めさせようというプロジェクトに乗り出したのです。もちろん裏表紙などに広告の掲載が出来ればいいのですが、その当時のクライアントの規模から考えるとその費用を捻出する事ができません。とにかくインパクトのある広告、誰もが手を止めてしまうようなベタな広告のアイディアを考えていきました。今考えても少しあり得ない危険なくらいインパクトのあるものを作り出し広告展開をしてゆきました。デザイナーとしても作りたくなかっただろうなと思うものや、行き過ぎた表現のものまで。例えば2%の人が見てくれたとしても100人中2人。50%の人が見てもらえる様なモノを作ったとすれば、その中で嫌悪感を抱く人は2:6:2の法則で考えても10人。何とも思わない人は30人、中身を理解してもらえる人は10人です。理路整然として綺麗な広告を作っていたならばそのクライアントは常に2%の人たちにしか自分たちの製品を理解して頂けていませんでした。この事はクライアントにとっても不利益ですが、潜在ユーザーにはもっと不利益なのです。製品を早く取り入れればユーザーにとってとても価値があるものなのです。大切なのは製品やサービスを完全に理解し、確実にビジュアルを作り込む事。さらに大切な事はユーザーの利益をあらゆる手段を使って伝える事。そのためには、ユーザーはどのような人なのか?を知る。最初からブランド価値を届けようと思っていても、伝わらなければそのモノの存在価値が無くなってしまいます。

現在でもこのクライアントは最も大切なクライアントの一つです。製品も社会的に必要である事が認められ、他社との熾烈な首位シェア争いをしています。私たちの提供するデザインは当時とは全く違うモノを提供しています。現在必要なのはブランド価値だからです。この約10年前の体験が「経営者の為のデザイン戦略7+1」の基礎となっています。利益を生むデザインを作り続ける事がデザイン戦略を構築する事なのです。 |